THE SPECKLED BAND 第6話 まだらの紐

 監督: ジョン・ブルース director...John Bruce

 脚色: ジェレミー・ポール dramatized...Jeremy Paul

 ゲスト: ジェレミー・ケンプ(グリムスビー・ロイロット博士) Jeremy Kemp as Dr.Grimesby Roylott

       ロザリン・ランドー(ヘレン・ストーナー) Rosalyn Landor as Helen Stoner      

 幸福な結婚を目の前に、密室となった寝室で、「まだらの紐」という謎の言葉を残して変死した姉。2年後、やはり結婚が決まった妹に同じ恐怖が忍び寄る。ホームズは、恐るべき敵ロイロット博士の挑戦を受け、彼の義理の娘を救うことができるのか?暴かれた意外な犯行方法とは?

 正典中、指折りの名作の登場です。内容については、「蛇は音が聴き取れない」「蛇は綱をのぼったり降りたりしない」「蛇はミルクは飲まない」「金庫の中に生き物を入れたら窒息する」「ジュリア・ストーナーは息を引き取るまでに『まだらの紐』と言い残す間があったのに、ロイロット博士はほぼ即死なのはおかしい」とか、いろいろ指摘されてますが、ただ、密室殺人のトリックとして、「通気孔と毒蛇」に着目したドイルのアイデアそのものは出色のものだと思います。毒蛇の恐怖を「まだらの紐」という言葉で表したドイルの言語センスも素晴らしい。

 というわけで、グラナダ版も、原作にほとんど改変を加えていません。細かい点では、原作では双子だったストーナー姉妹が5才違いになっていること(キャストの都合?)、ホームズとワトスンがロイロット家を見張るのが、原作では、宿屋なのに、グラナダ版では同じ敷地の狩猟小屋になっていること(ロケ地の都合?)などなど。蛇の撮影などは、相当苦労したそうですが、ほぼ原作通りの映像化に成功しています。(ただ、あの蛇は頭が三角じゃないから毒のない蛇ですよねー。まあ、ほんとに毒のあるのを使ったら危ないから仕方ないけど)

 NHK版は、冒頭の、ヘレンの婚約者も登場するロイロット家の場面をごっそり削ったおかげで、いつもの、1カットか2カットずつちょこまか切る、というセコいカットは今回はありませんでした。

 個人的には、グラナダ版が排除する方向だったはずの、ワトスンの三枚目的な描き方が随所に見られて、その点がちょっと不満。原作を再現することにいっぱいいっぱいでワトスンまで手が回らなかったのか?まあ、原作にもあるけど、「君に来てもらうべきか迷った。とても危険だから。」「僕で役に立つなら。」「ありがとう。」の会話で許す。あと、原作の、ヒヒに出くわす場面で、ホームズがワトスンの手を強く握った、というのが再現されてないのは、残念。ジュリアの寝室で、ランプの前にマッチとろうそくを置くホームズの手が震えているのが、彼の緊張が伝わってくるようで、よかったです。その後、ランプを消す前にちらっとワトスンの方を見るのですよね〜。それから、冒頭、ワトスンを起こす場面で、ホームズが、しばらく煙草を吸いながら、ワトスンの寝顔を眺めていたふしがあるのが、ちょっとアヤしい・・・。

 ストーナー姉妹は、二人揃って優雅な容姿で、英語の発音も美しく、いかにもイギリス上流階級の女性、といった感じで素敵でした。

 質の高い原作の忠実な映像化に成功したことによって、非常に見ごたえのある一編になったと思います。

 

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