THE NAVAL TREATY 第3話 海軍条約事件

 監督: アラン・グリント director...Alan Grint

 脚色: ジェレミー・ポール dramatized...Jeremy Paul

 ゲスト: デヴィッド・グィリム(パーシー・フェルプス) David Gwillim as Percy Phelps

       ガレス・トーマス(ジョゼフ・ハリスン) Gareth Thomas as Joseph Harrison

       アリスン・スキルベック(アニー・ハリスン) Alison Skilbeck as Annie Harrison

 ワトスンの幼なじみで、外務省に務めるパーシー・フェルプスが、重要な条約文書を何者かに盗まれ、ワトスンを通じてホームズに助けを求めて来る。盗難から2ヶ月が経過したというのに、文書が他国に渡った形跡がないのは何故か。犯行現場の事務室で鳴ったベルの謎とは?

 原作は、ワトスンの結婚後という設定で、ワトスンがフェルプスの手紙を持って訪ねて来ると、ホームズが化学の実験をしていた、という場面から始まります。もちろん結婚してるわけがないグラナダ版のワトスンも、手紙を持って実験中のホームズを訪ねて来ますが、「僕の患者は」「僕の事件よりそちらの方が面白いなら」「いや、ちょうど暇で」というやりとりがこの場面に挿入されている(原作では、フェルプス邸から帰った後)ところを見ると、診療所から戻った、という設定のようです。やたらドアをノックするのは、「何で鍵がかかってるんだ!」という意思表示かしら。居間は共用のはずですからね。(笑)

 で、この場面では、散らかり放題の部屋の様子も描かれます。(NHK版ではカット)原作では「マスグレーブ家の儀式書」で描かれている部分で、ホームズが拳銃で壁を撃って、VR(ヴィクトリア女王)と跡をつけてしまう、有名な件りも再現されています。

 このエピソードは、原作の情報量が多いためか、かなり展開が駆け足。ワトスンが、ロンドンに連れて来たフェルプスの愚痴を延々聞かされる場面など、カットされている原作の場面がやや多かったような。原作にない場面でちょっとよいなあ、と思ったのは、まず、フェルプスの話を聞く場面で、話の途中でフェルプスが発作を起こしてしまい、ワトスンとアニー・ハリスン(存在感バツグン)が看護している間、ホームズが部屋の外で煙草を吸っているシーン。分煙化が進んだ職場の喫煙所で吸ってるサラリーマンのよう。(笑)

 あと、フェルプス邸から戻った夜、「君には本職がある。でも、一緒に来てくれたら助かる。」とホームズがワトスンに言う場面(NHK版はカット)、外務省でフェルプスの同僚ゴローが「私の姓がフランス系だから疑われるのか」と言うのに対して、ワトスンが「ホームズの祖母はフランス人ですよ。」と受ける場面(そんなことまで知ってたのねって感じ)、それに、ウォーキングからロンドンに戻って来た二人が、ベーカー街を肩を並べてさくさく歩く図が、絵的に素敵でしたわん。

 それから、ラストに、アニー・ハリスンがフェルプスをベーカー街に迎えに来て、フェルプスが「僕から(兄が犯人だったことを)彼女にうまく話します。」という場面が付け加えられたのはよかったと思います。原作では、自分を窮地に陥れた人物の妹である婚約者に対するフェルプスの心情が抜けていたので、今後二人はどうなるのか、という不安が残りましたが、グラナダ版では、二人はこの危機を乗り越える、ということが十分に示唆されて終わってました。

 物語の重要な鍵となる、フェルプスとジョセフ・ハリスンの寝室の交換、原作では少々無理があるように思えたのですが、映像で見ると、ほんとにフェルプスの寝室(元ジョセフの寝室)は、大きな窓がたくさんあって、とても明るく、広々とした気持ちのよい部屋で、確かに神経をやられた病人にはよい環境だなあと納得できました。しかもそこらじゅう花だらけ。(笑)

 花と言えば、原作でも、非常に唐突な印象があった、「バラは美しい云々」とホームズが自然と宗教について語る場面。やっぱり、ちょっと原作者の意図を図りかねる場面だったなあ。

 それから、この回のDVDの字幕、文意が変なところが多かったです。例えば、「地中海では、イタリアはフランスに支配されている」って????

 

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