『江談抄』一四九

 

               博雅三位が横笛を吹いたこと

               (大江匡房さまが)語られて言うには、「博雅三位が横笛を吹いたところ、鬼瓦が吹き落とされた※1
              という。そのことをご存知かどうか。」

               (わたくしは)答えて、「思いの外のことではありますが、存じております。」


               それだけの話なんですが、博雅の楽が余りに素晴らしいため、超常現象(爆)が起きてしまった、とい
              う説話では最も古いものです。著名な学者である大江匡房が語っていることなので、単なる伝説ではなく
              て、博雅の笛を聴いた人がそういう形容を使って褒めたことが実際にあって、それが語り継がれたのかも
              しれません。

              ※1 版本によっては、鬼が吹き落とされた、となっているそうです。その方が説話っぽいですね。『陰
              陽師』ネタにできそうだし。(^^;)


           『江談抄』は、平安後期、1111年以前の成立と見られ、大江匡房(1041〜1111)の談話を
              門人たちが筆録したものと推定されています。

 

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