作品について

 ・原作について 

 ・TVドラマシリーズについて

 

原作
 このサイトは、あくまでグラナダTV制作のドラマについてのサイトであり、原作については、他に詳細な作品リストやデータ・ベースを作成されているサイトが数多くありますので、ここではごく簡単な紹介にとどめたいと思います。

 原作者のアーサー・コナン・ドイルは、1887年発表の長編『緋色の研究』(“A Study in Scarlet”)で初めてホームズとワトスンの物語を世に送り出しました。続く1890年に長編第2作『四人の署名』(“The Sign of Four”)を発表、いずれもそれほどの反響は呼ばなかったのですが、1891年から雑誌『ストランド・マガジン』に短編が連載されると、これが爆発的な人気を呼ぶことになります。

 1892年に第1短編集『シャーロック・ホームズの冒険』(“The Adventures of Sherlock Holms”)、1894年に第2短編集『シャーロック・ホームズの回想』(“The Memoirs of Sherlock Holms”)が出版。しかし、作者のドイルは、このような娯楽小説で自分の名が高まるのを好まず、『回想』所収の「最後の冒険」で、ホームズをスイスの滝の底に葬り去ってしまいます。が、その死を惜しむファンの熱意に押され、1901年に再び『ストランド』誌に『バスカヴィル家の犬』(“The Hound of The Baskervilles”)(1902年出版)の連載を始め、1903年連載の「空き家の冒険」でホームズを復活させるに至ったのでした。その後、短編集は「空き家」を収めた『シャーロック・ホームズの帰還』(“The Return of Sherlock Holms”)(1905年)、『最後の挨拶』(“His Last Bow”)(1917年)、『シャーロック・ホームズの事件簿』(“The Case-book of Sherlock Holms”)(1927年)、長編は『恐怖の谷』(“The Valley of Fear”)(1915年)が発表されるのです。

 ホームズの人気は、本国イギリスに止まらず、世界中に広がり、現在も広がり続けています。熱心なホームズのファンは、「シャーロキアン」(イギリスでは「ホームジアン」)と呼ばれ、ホームズの研究書や、ドイル以外の作者による「パスティーシュ」と呼ばれるホームズ物語は、枚挙の暇もなく、今も書き続けられているのです。

 

TVドラマシリーズ
 さて、イギリスのグラナダTVが、原作の忠実な映像化を目指して、ドラマ・シリーズ“The Adventures of Sherlock Holms”をスタートさせたのは、1984年のことでした。日本では、1985年からNHKで『シャーロック・ホームズの冒険』として放映が開始されます。

 日本では、一貫して『シャーロック・ホームズの冒険』と題して、1本のシリーズとして放映されましたが、本国での放映は、“The Adventures of Sherlock Holms”(全13話、1984〜1985年)、“The Return of Sherlock Holms”(全13話、スペシャル2本含む、1986〜1988年)、“The Casebook of Sherlock Holms”(全9話、スペシャル3本含む、1991〜1993年)、“The Memoirs of Sherlock Holms”(全6話、1994年)と4シーズンに分けて製作されています。(一応、短編集のタイトルを使用していますが、各シーズンで放映されたエピソードは、同タイトルの短編集収録の短編とは対応していません。)

 原作に忠実であることを使命としたドラマ化でしたが、ドラマの制作を立案したマイケル・コックスが製作を担当した第1シーズンと第3シーズン(スペシャルを除く)は、原作に忠実な映像化が行われています。一方、多忙となったコックスに代わってジューン・ウィンダム・デーヴィスが製作を担当したうち、第2シーズンはさほどの逸脱は見られないものの、3本のスペシャルと第4シーズンは、ドラマ化が容易な原作が乏しくなったせいもあり、大幅なアレンジがひどく目に付くようになり、賛否が分かれるところ。(管理人自身の評価は、エピソード紹介で詳しく。)

 残念ながら、シリーズは、1995年にホームズ役のジェレミー・ブレットが心臓疾患で逝去したことによって、終了を余儀なくされます。しかし、作品は、稀代のホームズ役者に数えられたブレットの名前と共に、末永く愛されてゆくことでしょう。


  このドラマの魅力は、もちろん、ストーリーから、人物の描き方(特にワトスン)、背景、衣装、セットや小道具に至るまで、原作を忠実に再現しているところもあるのですが、何より、その美しい画面構成にあると思います。

 朝もやの中を駆ける馬車や、思索に沈むホームズの表情、ゲストの美しい女性たちの姿、劇的なクライマックスといった印象の強い場面が、美しいのは当然として、人物の何気ない表情や、さして重要ではないごく平凡でささいな場面を一つ取り出しても、十分に一幅の絵になるのです。全てのカット、一つ一つの構図が計算され尽くしているのです。

 そのような美しい画面が連続することによって、ドラマ全体が緊張感を持ち、完成度の高いホームズの世界が作り上げられているのです。


 管理人は、NHKで最初に放映された「ボヘミアの醜聞」を見ていますが、すっかり魅せられてしまい、その後のレギュラー放送も欠かさずチェックしていました。

 しかし、後のシリーズになると、時間が不定期なこともあって、見逃してしまうことも多かったのです。何度もあった再放送でも、状況は同じでした。

 それが、2001年の秋、ミステリ・チャンネルで、34話まで連日のように放映されていたのを、一気に(しかも何度も)見るチャンスを得ることが出来、それで、改めてずっぽりとハマってしまい、遂には、こうしてサイトを立ち上げる仕儀にまで至ってしまったのでした。


 さて、先に述べたように、原作に忠実であることを大目標に作られたドラマではありましたが、やはり映像化が難しいエピソードも少なくなく、特にシリーズの後半にいくと、大幅にアレンジした作品も目立つようになりました。

 しかし、全編を通して、原作とは異なる点が一つあります。

 それは、「ワトスンが常にベーカー街でホームズと同居している。」という点です。原作では、早くも2作目の「四人の署名」で、ワトスンはメアリ・モースタンと結婚し、ベーカー街を離れたのは、周知の通り。ですので、有名な作品の中には、ワトスンがホームズと別居しているものが結構多いのです。(その後、「最後の事件」でホームズが姿を消している間にワトスンは妻メアリと死別したと見られ、ベーカー街に戻っていますが、後には再婚し、再びベーカー街を出たという説が有力なようです。)

 が、ドラマでは、ワトスンを常にホームズの同居人とする方針を取りました。その結果、ドラマでのワトスンは、「四人の署名」でメアリ・モースタンと出会ったものの、結ばれることはなく、終始一貫して、ベーカー街でホームズと共に暮らすこととなります。そこで、原作では、「ホームズを訪ねてくるワトスン」が、「ベーカー街でのホームズとワトスン」にさしかえられていることが多く、その結果、原作よりも二人の会話や生活が丹念に描かれることとなったのでした。

 管理人は、ホームズの物語は、ホームズとワトスンの友情の物語でもあると考える一人です。このサイトでは、特に二人の関係の描かれ方に着目して、この美しいドラマについて語ってゆきたいと思います。

 

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